2018年の芥川賞。桃子さんは、人恋しくなるとバスに乗って病院へ行く。もちろん年齢も年齢だから、何かしら診てもらいたいところはある。
この本には幸せな結婚生活の記憶が綴ってある。惚れていた男を病気で失った後悔が書いてある。他人の孤独をじっと観察している様子も書かれている。そして悲しみ抜いた後に発見してしまった孤独と自由の喜びも。
私が惹かれたのは、桃子さんがちょくちょく自らを分析しているところ。それを一生懸命ノートに書き留めるところ。
表層の方にいる桃子さんは、東京弁を使い、人から好かれるように振る舞っている。最下層の桃子さんは、ものすごい唸り声をあげたり、裸で踊り狂ったりする笑。同じ人間でも、層が違うとこんなに違うんだ、って笑
でも、この層という考え方は好き。どれだけ相手の深い層を引き出せるのか。興味がなければ引き出す必要もないし、表層の方が万人受けはするだろう。
あれこれ思っては書き留めていく桃子さんの感受性が、唸ってしまうほど素敵。
悲しみも愛しさも自由の喜びも、全てじーんと伝わってくるのに、常にクスッと笑ってしまうような可笑しさも同居している。
ちなみに、桃子さんは宮澤賢治派です!
『おらおらでひとりいぐも』 若竹千佐子著 河出書房新社 2017年