『移動祝祭日』


アーネスト・ヘミングウェイ著。こちらも『読書会という幸福』にて紹介されていた本。

『読書会という幸福』では、最初の妻とパリで過ごした日々について書いたこの本が、有名な他の作品よりも意外と反応が良かった、とあった。

本の扉には、ヘミングウェイ自身の記述「もしきみが幸運にも青春時代をパリで過ごしたとすれば、きみが残りの人生をどこで過ごそうとも、パリはきみについてまわる。なぜなら、パリは移動祝祭日だからだ」と書いてある。

わくわくしませんか(笑)?

ヘミングウェイといえば、『老人と海』など、ウィキペディアで調べてみたけど、ハードボイルド作家、という括りであり、私もこういうイメージで捉えていた。

戦争とか、釣りとか、マッチョなイメージしかなかったので、あまり魅かれたことがなかった。

けれどもこの本を読んで、イメージって、あくまでイメージでしかないのだな、と改めて。

読んでて、あー、いいなー、ってすぐに躓くので、少しづつしか進まない。

こういう時、あ、これいい本、って思う。

いい本って、本当に少しずつしか読ませないんだもん。一口ずつ、至福を味わうお菓子みたいな。

まだ半分しか読んでないのだが。

下記の件を読んで、あ、この本には私の知りたいこときっといっぱい書いてある、と思った。

ご近所のマダムのお宅にお呼ばれして、お話しているところ。

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「あなた方は、服を買うか、絵を買うか、のどちらかですよ」と彼女は言った。「そのくらい単純なことです。あまり金持でない人は、だれだって両方をすることはむりです。自分の服なんかには気をとられず、モードなんかにも一向とんちゃくしないようになさい。そして着心地の良い、長つづきのする服をお買いなさい。そうすれば、服を買うお金を、絵を買う方へ回せますよ。」

「でも、たとえこれ以上一枚も服を買わなかったとしても、ぼくのほしいピカソを買うお金なんかありませんね」と私は言った。

「そうでしょうよ。あなたはピカソには手がとどきませんよ。あなたと同年輩の人びとのを買わなくちゃ―同じころ軍隊勤務をしていた人びとのを。それらの連中と知り合いになりますよ。この界隈で出会うでしょうから。いつだって、良い、まじめな新人の絵かきっているものです。」

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他にも、はっとするような記述に溢れている。

絵、とか、文学、とか、文章、とか、仕事、とか。

あと、釣りにも興味あるけど、道具とかいろいろお金がかかるから、関わらないようにしていて、釣りをしている人を見るのが楽しい、みたいなことが書いてある。

後日、ものすごいカジキマグロと格闘することになりますよ!

道具もボートも時間も、きっと都合できたんでしょうね。

自分の一歩、自分の一文、というものをこんなに大事にするものなんだなー、って。

『移動祝祭日』 アーネスト・ヘミングウェイ著 福田陸太郎訳 土曜文庫 土曜社 2016年(1964年 刊行)


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