92歳の現役投資家・経営者である、ウォーレン・バフェットの伝記。コカ・コーラとハンバーガーが大好きという、その嗜好は知っていて、その嗜好の方が共感できず(笑)いたが、何かと話題になる度に断片的な逸話だけは耳にしていた。
この方がどこかの企業の株を買うと、市場がこぞって追随するため、一年間発表しない権利をアメリカ証券市場で与えられていたとこの本に書いてあった。コロナ禍の2020年9月、日本の五大商社の株を買い増しし、2023年4月にも、追加投資を考えていると発表したことで、日本の経済界に勇気を与えたという話も新聞に出ていた。
この人の考え方は、株を買うのではなく、企業の一部を買うと考えている。利益や価値を生み続ける企業を所有したらあとは何もする必要がなく、下がったら買い増すだけで、できれば一生売りたくないのだそう。
この方についての本はたくさんあるので、ダイジェスト的な本を探してまず読んでみた。その本の中で、エピソードを紹介している部分で多く引用されていたのがこの『スノーボール』という本だった。アマゾンでググったら、本人も認めている公式な伝記とのこと。
『スノーボール』って、ずいぶん可愛いタイトルだな、と思ったけど、お金が複利で増えていく様を表していたよう(笑)。詩的であると同時に、 子どもっぽいといえば子どもっぽい、微笑ましいタイトル。お金が大好きで、増えていくのを見るのが楽しくて、ここまで来たらしい。
この人の考える企業の価値、マネージャーの価値というものを知るのは参考になる。企業の価値やマネージャーの価値でハッとしたのは、一番大切なのは正直であること、高い倫理意識を持っていること。わずかなルールでも破ると、ルールを破ること自体を何とも思わなくなって、次第に大きなコンプライアンス違反につながると考えているとのこと。そのような事例も数々見てきたとのこと。
バフェットが大好きなマネージャーは、パーティーの最中でも、トイレットペーパーの巻き数が気になったらパーティーを中座してトイレットペーパーを数えに戻らずにはいられないような人。自分の仕事の細部まで理解していて、安心して仕事を任せられる人。何を会長に伝えるべきで、何を伝えなくてよいかを判断できる人。悪いことだけはすぐに知らせてくれる人。
この、バフェットが大好きな経営者のエピソードを読むだけでも、働くって究極的にどういうことか、信頼を得るって究極的にどういうことか、学べる。(できるかどうかはともかく。)
正義は勝つし、悪は滅びる。
利益を追求することと、人として優しく、倫理意識が高いということを自然と両立させているからこそ、経営上の困難などにぶつかった時どのように行動するのか、他者の参考になるのかも。
『文庫 スノーボール』ウォーレン・バフェット伝〈上・中・下 合本版〉 アリス・シュローダー著 日本経済新聞出版 2014年