こういう、イデオロギーの絡んだ本を書くのって、勇気があるな、と思う。自分の立場を明らかにできる人って、尊敬する。自分が何を考えていて、何を信じていて、政党とか、宗教とか、天皇制とか、死刑制度とか、、、。自分は自分の思想や感情や哲学さえも突き詰めて考えられないんだな、とこういう頭脳明晰な人に出会うたび、自分が恥ずかしくなる。
大学生のとき、哲学の教授と話しているとき、よくこんな風に感じた。
とはいえ、分からないものを分かる振りをしても仕方がないので、分からないままにしておくしかない。。。
この人の小説は、社会学者だけあって、社会問題を提起するような設定になっていて、一見そちらを論じたいのかと騙されかけるのだけど!?やっぱり専業の小説家が書く以上の恋愛小説にきちんとなっているところがすごくて、何者なんだ、とおののいてしまう。
小説家はもともと小説を書きたいわけで、言ってみれば恋愛とか人間ドラマを一番大切に考えているのではないかと思うわけ。それなのに、専業の小説家以上の小説を社会学者とか別の職業をしている人に書かれてしまうと、小説家の立つ瀬がないじゃないか、などと思ってしまう。
今回も、大層なタイトルがついているので、こんなに直球な恋愛小説を読ませてもらえるとは思わなかったというか、期待しないようにしてたけど、期待を裏切らないなーーーーー。読ませてくれるなーーーー。
『ヒノマル』 古市憲寿著 文藝春秋 2022年