コロナ禍で変わった人と人の距離感について。
主人公のマリエは、パリ在住の日系フランス人。離婚後十年、仕事と子育てだけに追われてきた。
そして子育てが落ち着いたとき、出会った男性と食事やバーに行き、次第に打ち解けて行く。
忙しい仕事を放り出すように!?恋にのめり込んでいく主人公。
恋のお相手は友人や家族も虜にしてしまうような魅力的な男性。
恋から遠ざかっていた主人公は、期待をしないように、おそるおそる距離を縮めて行くが。。。
ある疑念が生まれ、決定的とも思える衝撃的な話を知人から伝え聞き、主人公は相手を問い詰める。相手の返答に納得できない主人公。
理解できない、信じることができなくなった主人公は相手と別れる決心をする。
そんな時、主人公は自身が新型コロナに感染したことに気づく。いつもと全く違う症状。明らかな違和感。
隔離され、生死の境を彷徨い、もう死んでもいいや、と思う主人公。
新型コロナで会えなくなった家族、恋人たち、永遠の別れを体験した人、たくさんいると思う。誰もが予想できなかったこのような事態を、誰もが体験したこととして、痛みを持って共感できることと思う。
こんな世界を皆で生きているんだなぁ、と改めて思う。
女性の主人公は映画のプロデューサーで、カンヌ映画祭への出品に間に合わせようと必死に監督と渡り合っている。男性は投資家であり、事業家であり、ロシアの血を引く家族の歴史を織り込んだ壮大な小説を書いて主人公に批評してもらおうとする。主人公はシナリオ形式だった創作物を、出版社に紹介して、出版社より小説形式に書き直すように勧められる。
男性は小説に書き直し、その作品は新人賞を受賞し、一躍時の人となっていくが、主人公はやはり男性を信頼することができず、、、。
最後に、刑務所に会いに行き、主人公はコロナと信頼関係の破綻で延期というか破談になっていた結婚の承諾をする。
『十年後の恋』 辻仁成著 集英社 2021年1月30日 初版発行