真冬の夜のしんとした空気を感じられる恋愛小説。
この小説を恋愛小説じゃない、と思う方も多くいらっしゃるようですが、私は素晴らしい恋愛小説だと思いました。
恋愛にも様々なグラデーションがあり、必ずしも全てが相対峙して起こるものではないし、肉体的なものでもないと感じます。
この主人公女性の思い込みが激しく、1人でどんどんと頭の中で恋愛を育てていくところ、共感が持てました。
あらすじを追ってしまうと、お付き合いしたわけでもなく、何の約束をしたわけでもなく、恋愛未満かもしれませんが、主人公の行動を引き出し、新たな世界に踏み出させた、という意味で、立派に恋愛したよー、がんばったねー、と主人公を褒めてあげたい(なぜに上から目線⁉︎)
この2人の逢瀬自体は、カルチャースクールの後にお茶するとか、喫茶店で会うとか、
中学生的な雰囲気で微笑ましいのですが、
それにはやはりというか、
事情があったみたいです。
それでも、恋する乙女の切ない気持ちは感じることができて、
切った、張ったの波瀾万丈な恋愛小説ではないですが、
恋する気持ちって、こんなだったよね、という初心に戻れる小説だと思います。
『すべて真夜中の小説たち』 川上未映子/著 講談社 2011年