文庫本を手に取って、なんか既視感があるな、と思いながら読んでいたら、単行本の時にも読んでいた本でした。
私がnoteを始めたのはつい最近ですが、文庫本の著者紹介には、早川書房「note」歴代アクセス第1位を記録したと書いてあります。なんかすごいのは実感として分かる…
この『ピュア』の中には、6編の短編が収録されていますが、そのうち1編の感想をシェアします。
文庫本のタイトルにもなっている「ピュア」。
15歳から18歳のメスだけで構成されている「ユング」という学園星は宇宙ステーションにあり、月に一度、地球で”狩り”をすることが義務付けられている。そして、卒業後には上級士官として軍に服役することが決まっている。子どもをたくさん産んで、”名誉女性”になると兵役を免除されるという。
大気汚染や疫病で、暮らすには適さない環境になってしまった地球には、男たちが住んでいる。どんな環境でも生きていけるように遺伝子の改良を重ねると、進化したのは女ばかりになってしまった。
外見上はティラノサウルスのように先祖返りした女たちは、きらめく鱗や尖った爪、尖った牙を備え、男を狩りするのに適した外見に変化した…
女性著者によるS・Fストーリー。
15歳から18歳女子の会話にリアリティがあって、ものすごく引き込まれる。
p.12
「あーもう、あの先生、マジでウザすぎ!なんとかしてよ、もう」
マミちゃんの苛立ちを含んだ大声が、カフェテリアじゅうに響き渡る。
「子供を産むこと、我が国を守ることは、みなさんに課せられた素晴らしい使命です。しっかりと全うしてください』……だって。知らんし、まじで。クニのことなんか知らねえしまじで」
p.23
「だぁるい」「あ、お菓子忘れた」「今日の前髪、変じゃない?」「いいよ、誰も見ないし」
「ピュア」小野美由紀著 『SFマガジン』2019年6月号
「ピュア」『ピュア』 早川文庫 2023年
主人公はある日教室で、女に生まれてよかったなと思う?という質問をし、ハズす。
また、主人公は、狩りのために地球にやってきた時、おもむろにかけだしたくなり、かけだす。そして、テトラの山のてっぺんに上るが、バランスを崩し、落っこち、テトラの瓦礫の下に埋まる。そこへ、人間の男エイジがやってきて、助けてくれる。助けても食べないでくれ、というエイジ。男の後ろには、人間の子どもが二人顔を覗かせた。この子たちを育てたいから、食べないでくれという。
主人公は、食べないから、またここに来てもいい、とエイジに尋ねる。
そして、地球に来るたびに狩りをサボり、エイジの元に通い始める。
エイジは、本を読むのが好きだという。昔は、男と女がつがいになって、一緒に住んで、カゾクをつくって、お金を共有したり、労働力を提供しあったり、結束を深めていたらしい、ということを教えてくれる。
エイジの好きな作家は夏目漱石(主人公は知らない)で、昔は男と女が好意を伝え合う時に、『月が綺麗ですね』と言ったらしいよ、と教えてくれる。
「私、男を好きになった」(略)
「へえええええ!?」(略)
「は? 好き? は? うっそでしょ? マジで?」(略)
「え? 恋ってやつ?」(略)
「何やってる人」
「……無職」
「無理。マジ無理。あんた絶対幸せになんないよ」
「ピュア」『ピュア』 早川文庫 2023年
ある日、主人公が地球に行くと、エイジが食べられている最中だった。主人公は戦い、相手の首を払う。エイジは、お前になら食われてもいいよ、食ってくれ、という。そして、できれば子どもの面倒を見てやってくれという。主人公は、エイジくんのこと、ずっと食べたいと思っていた、と言って命をもらう。
そして、エイジが育てていたふたりの子どもに、狩りの仕方を教えていく。
「ピュア」『ピュア』 早川文庫 2023年