チャン・ツィー主演。舞妓の恋と半生を描いたハリウッド映画。チャン・ツィーの美しさだけでもずっと見ていられる。
千代(のちのSAYURI)は親の借金から、小さい頃に置き屋に売られる。同じ立場のおカボと一緒に、舞妓になるべく、日舞や茶道に励むお千代。
芸事に打ち込む話って惹かれる。何につけ大きく花開くためには、一心不乱に修行する時期というのが必ずあるのだろう。
ある日、千代は素敵な芸者さんをエスコートしている男性に出会う。その人は会長さん、と呼ばれていた。
千代はもう一度あの人に会いたいと、舞いの稽古に身を入れる。舞妓として名を挙げれば、会長さんにまた会えるかもしれないと思う。
千代は、会長さんの新聞記事などを切り抜き、持ってていいよ、と言われて会長さんからいただいたハンカチと一緒に大切にする。
舞妓としてお座敷に出るようになり、千代は会長さんに再会する。
しかし、会長さんの大親友であり、命の恩人でもある社長は千代に執心している。
日々社長にご指名をいただくさゆり(千代の源氏名)はもちろん何も言えない…
恋愛映画として見てもいいし、日本文化に浸るにもいい。日本人の人間関係を学べる。この映画に出てくる皆が、ザ・日本人、と思った。
『ゴッドファーザー』を見たとき、マフィアという枠に収まらない人間関係、組織や家族のマネジメントが学べると思ったが、この映画(芸者の映画)でも、日本人全般の人間関係が学べる気がする。良きにつけ、悪しきにつけ。
会長さんがエスコートしていた芸妓さんは、豆葉(まめは)姐さんといって、超売れっ子の芸妓さんだったが、さゆりは豆葉姐さんと姉妹の契りを結び、芸妓として、女として、相手を見つめて魅きつけるテクニックなどを仕込まれる。この辺も好き。
芸という観点からは、千代が都おどりで踊りを披露するシーンが圧巻だ。
「踊り」っていう言葉にどんなイメージを持つかは人それぞれだと思うが。
雪が降りしきる(設定の)中、番傘を小道具に、狂ったように高下駄を鳴らし、着物の裾を乱して踊るさゆりが、狂気じみていた。
何か怖ろしくて、美しいものを見た、と思った。
会長さん役は渡辺謙。原作はアーサー・ゴールデン。
小説もいいけど、チャン・ツィーの美しさと踊りがあるから、やっぱり映画の方がいい。
『SAYURI』チャン・ツィー、渡辺謙/出演 ロブ・マーシャル/監督 ポニーキャニオン 2006年
『さゆり(上・下)』アーサー・ゴールデン著 文春文庫 2004年